白山国立公園内にある白水の滝は、伝統的な合掌造りの農家が有名になる以前の白川郷の観光名所であり、少なくとも中世以降は修験者の聖地とされてきた。高さ72mの滝は、約2200年前の白山の噴火で流れ落ちた溶岩が、現在の大白川の上で固まってできた急峻な崖で、溶岩が空気と触れ合ってできた縦横の割れ目が見られる。滝周辺の原生林には、ブナ、カシ、カツラ、トチノキ(Aesculus turbinata)などの巨木が点在している。 白川方面から白山山頂に向かうメインの登山道は、白水の滝を通り過ぎるため、滝は8世紀頃から山を修行の場として使い始めた修行僧の間で何代も前から知られていたという。修行者たちは登頂して、霊的な修養を自らの身に染み込ませるため、しばしば山中で長期間過ごしていた。中世、白山を崇拝する人々は、白山とその周辺を仏様の世界を視覚的に表すものである曼荼羅で表現していた。白水の滝の周辺は、聖なる山と現世を隔てる精神的な「結界」を表していた。 1963年に完成した、滝から大白川の上流にある大白川ダムの工事中に、白水の滝周辺や白山登山道で中世の銅の手鏡が発見されたことも、白水の滝が信仰の場として重要であることを示している。縁起の良い植物や仏教のモチーフが浮き彫りにされたこの鏡は、信者が信仰の対象となる場所に置いていったことが知られており、白山の山頂からも多数出土している。